この記事を書くことに先だって、自身がミト活を考える契機について伝えることになります。
がんで、身近な人を失いました。
この経験は、時間が経つほどに私の中で大きくなり、「どうすれば人はもっと健やかに生きられるんだろう?」
という問いを深く残しました。
そこから、栄養・腸内環境・睡眠・運動についてより深く考察し、そして ミトコンドリア という存在が見えてきました。
私は医療者ではありませんが、10年近く食からの栄養を扱う身として、もっと早く知っておきたかったと思う事でした。この経験が「ミト活」を広めたいと思う原点になっています。
確実にがんを治せるという話ではありません。
でも、研究からわかってきた 癌の一因 に光を当てることで、日々の選択をより良い方向へ変えていくことはできると感じています。
今回のブログでは、がんとミトコンドリアの関係について、いまの私が伝えられること をできるだけわかりやすくまとめました。
1. がん細胞の特徴は「エネルギーの作り方」にある
がんには種類がたくさんありますが、細胞のエネルギーの作り方に共通した特徴があります。
それは、
✔ ミトコンドリアをうまく使えない
つまり、高効率な酸素を使用したATP生産ができなくなる。
✔ 糖だけでエネルギーを作る「解糖系」に強く依存する
これは「ワールブルグ効果」と呼ばれています。
がん細胞は、私たちの細胞が本来使う酸素でエネルギーを作る仕組みから外れ、効率の悪い古い方式に戻っている、とされています。
ワールプログ効果で起る事
ワールブルグ効果が起きると、細胞の周りではいくつもの“代謝の偏り”が重なっていきます。
ここからが重要なポイントです。
① 粗くて効率の悪いエネルギー生産しかできない
解糖系だけでは糖1つから 2 ATP しか作れません。
(ミトコンドリアでは30〜36 ATP)
がん細胞は効率が悪い代わりに、とにかく大量の糖を吸い込みとにかく高速で分解して回数でATPを絞り出すという“無理な生き方”をします。
② 大量の乳酸が生まれ、細胞周囲が酸性になる
解糖系を使い続けると、副産物として 乳酸 がどんどん溜まります。
その結果、細胞のまわりが酸性に傾く
炎症が起こりやすくなる
免疫細胞が働きにくい環境になる
という“がん細胞に都合の良い土壌”が作られていきます。
③ 周囲の正常細胞が弱り、がん細胞だけが生き残る
酸性環境・炎症・酸化ストレスが続くと
正常細胞は耐えられない
がん細胞だけが生き残る
がん細胞同士が増殖を助け合う
という方向に進みます。
つまりワールブルグ効果は、がん細胞を強くするためのではなく、ミトコンドリアが使えなくなった細胞の苦し紛れの生存方法。
なのに、その無茶な代謝が逆にがん細胞だけに“生き残りの優位性”を与えてしまう。
④ 若い人ほどこの「無茶な代謝」に耐えてしまう
若い細胞は代謝能力が強いため、粗いエネルギー生産にも耐え、糖を大量に使い解糖系だけでも高速で増殖できる。これが、若年がんが“進行が速い”理由のひとつではないかとされています。
● 研究の背景
- Otto Warburg(ノーベル賞生化学者)が最初に発見
- Cell Metabolism(2010)
- Nature Reviews Cancer(2016)
2. ミトコンドリアが弱ると、がんの土台ができる理由
ミトコンドリアは「エネルギー工場」だけではありません。
細胞を守るための安全装置の役割も持っています。
エネルギー生産だけでないミトコンドリアの大事な働き
- DNA修復に必要なエネルギー(ATP)を供給
- 異常細胞に「自滅」の指示を出す(アポトーシス)
- 活性酸素の処理
- 代謝のバランス調整
- 免疫の質を保つ
がんについては特にアポトーシス「異常細胞の自滅」の役割が重要です。
アポトーシスについて
私たちの身体では、毎日たくさんの細胞が入れ替わっています。
そのとき大切なのが、「アポトーシス(細胞の自滅)」という仕組みです。
ミトコンドリアが元気だと、傷ついた細胞に「もう休んで大丈夫ですよ」という合図を出し、不要な細胞を静かに処理してくれます。
ミトコンドリアが弱ると、本来なら消えるべき細胞がそのまま残ってしまいます。
これが長い時間をかけて積み重なると、がんの一因になり得ます。
これは異常が出た細胞が、自分で静かに身を引くためのスイッチのようなもの。
このスイッチを支えているのが ミトコンドリア です。
ただ、アポトーシス“だけ”が原因というよりも、ミトコンドリアが本来もっている大きな役割を総合的にこなせなくなることで、細胞の修復や回復の力そのものが弱まり、その結果としてアポトーシスまで手が回らなくなっていくのではないかと考えられます。
● 背景研究
- Science(2000)
- Cell(2015)
- Nature Cell Biology(2019)
3. ミトコンドリアが疲れやすい現代の生活の要因5つ
進化のスピードに比べて、現代の生活環境は急激に変わりました。
そのギャップが、ミトコンドリアに負担をかけています。
ここでは、研究でよく指摘される要因を紹介します。
① 精製糖の摂りすぎ
- 糖過多は活性酸素を増やし、ミトコンドリアDNAを損傷
(Journal of Biological Chemistry, 2014)
② 酸化した脂質(揚げ油など)
- 酸化油はミトコンドリア膜を傷つける
(Free Radical Biology & Medicine, 2016)
③ 腸内環境の乱れ
- 腸内の慢性炎症はミトコンドリアの働きを弱める
(Gut, 2020) - 善玉菌はミトコンドリア遺伝子を整える働き
(Nature, 2019)
④ 睡眠不足
- 睡眠中に行われるミトコンドリア修復が阻害される
(Neuroscience, 2018)
⑤ 運動不足
- 運動はミトコンドリアを増やす強力な刺激
(PNAS, 2011)
4. 研究が示す「がんリスクを下げる方向性」
がんは多因子的でとても複雑ですが、世界的な研究の積み重ねから共通の傾向があります。
それは、
ミトコンドリアが元気だと、がんの一因となる要素を減らせる
ということです。
具体的には、次の習慣がミトコンドリアの元気につながり「リスクを下げる方向」に働くと報告されています。
① 軽い空腹時間(12〜16時間)をつくる
- ミトコンドリアの質改善
(Cell Metabolism, 2018)
② 速歩きなどの軽い運動
- 全がんリスクの低下と関連
(British Journal of Sports Medicine, 2020)
③ 野菜・発酵食品で腸を整える
- 発酵食品摂取でがんリスク低下
(BMJ, 2020)
④ 自然の抗酸化を増やす
- ミトコンドリア損傷を抑える
(Science Translational Medicine, 2014)
⑤ 良質な脂質を選ぶ
- ミトコンドリア膜の健康維持
(BBA Bioenergetics, 2016)
がんに対しての期待される効果
ミト活(生活習慣からのミトコンドリアの元気コントロール)は
① 予防…非常に強く働く(大)
ミトコンドリアの健康は、
がんの“土台”となる要因を減らすうえで大きく役立ちます。
- 炎症の低下
- DNA修復の安定
- 酸化ストレスの軽減
- 解糖系の暴走を防ぐ
- 免疫の質を保つ
これらはすべてミトコンドリアが元気であるほど整いやすい要素です。
② 排除…“芽の段階”なら対応できる(中)
日常的に生まれる小さな異常細胞(芽)のレベルであれば、ミトコンドリアを整えることで、以下の働きが強まりやすくなります。
- アポトーシス(異常細胞の手放し)
- DNA修復
- 免疫細胞の活性
- 炎症環境の改善
その結果、ミクロな段階のがん細胞を処理する力は確実に上がると考えられます。
③ 進行の抑制…環境を変えて進み方を緩くできることもある(小〜中)
ミトコンドリアの働きが整うと、
- 解糖系への偏りが減る
- 乳酸による酸性環境が弱まる
- 炎症の鎮静
- 体力・免疫の維持
- 栄養代謝の正常化
といった変化が起こり、がん細胞が育ちやすい環境そのものを弱める効果が期待できます。
ただし、
- すでに大きく育った腫瘍を縮小させる
- 進行がんを治す
といったレベルまでは、ミト活単独では難しいと考えられます。
予防や初期段階でのリスクを減らすという意味では、大きな関係があります。
5. おわりに──ミト活は“特別なもの”ではない
がんは、とても複雑で、対策に明確な答えはないと思います。
ただひとつ確かなのは、日々の小さな積み重ねが、細胞の未来をつくるということ。
歩く、よく寝る、自然の栄養をとる、腸を整える。
どれも驚くほどシンプルですが、ミトコンドリアが元気でいるためには、とても大切なことばかりです。
さらにミトコンドリアをめぐる生命エネルギーの流れは、がんという特定の病気にかぎらず、予防、免疫、回復のすべてに深く関わっていることがいまの研究で少しずつわかってきています。
「そんなに大事なの? 本当?」と思う人もいるかもしれません。
けれどこれは、特別な健康法の話ではなくて、細胞の研究・代謝の研究・免疫の研究など、いろいろな分野が別々の場所から同じ結論に近づいている、とても自然な流れの中で見えてきたこと。
そして、自身の経験と知識から考察しても、最も健康の根本に近いと感じたことです。
なので、ミトコンドリアが疲れるといろいろな不調の「入り口」になりやすい。
がんだけでなく、風邪をひきやすさ・疲れやすさ・回復力・メンタルの安定など、とても広い部分に関わってくるんです。
「ミトコンドリアを大切にする」ということは、身体が本来もっている力を、そっと応援することです。
だから、私はミト活を広めていきたいと考えています。
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